相続税申告(相続発生後)
相続税申告の期限
1 相続税申告の期限
相続税申告の期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です。
相続の開始とは、被相続人(故人)の死亡した日を意味します。
この10か月以内に、相続税の申告書を税務署に提出し、納税を完了しなければなりません。
申告期限を過ぎたのちに申告をすると、延滞税や無申告加算税が課される可能性があるため、期限内の申告は非常に重要です。
2 無申告加算税の発生
期限内に相続税申告を行わなかった場合、無申告加算税が課されます。無申告加算税は、本来納付すべき相続税額に対して追加で課される税金です。
具体的には、期限後に自主的に申告を行った場合でも、通常は納付すべき税額の5%が加算されます。
さらに、税務署から指摘を受けた後に申告を行った場合には、10%から20%の無申告加算税が課されることになります。
無申告加算税の割合は、納付すべき税額や税務調査前かどうかで変わってきます。
3 延滞税の発生
相続税申告の期限を過ぎると、延滞税が発生します。
延滞税は、納付すべき相続税の額に対して日割りで計算される追加の税金です。
延滞税は、納期限の翌日から納付日までの日数に応じて計算されます。
延滞税の利率は年度ごとに変動しますが、一般的にはかなり高い利率が適用されるため、早めに申告・納付を行うことが重要です。
具体的に、令和6年1月1日~12月31日の期間の延滞税の税率は、納期限の翌日から2か月以内の場合は、年2.4%(原則は年7.3%)、納期限の翌日から2か月を超える場合は、年8.7%(原則は年14.6%)となります。
4 相続税申告期限と早期の対応の重要性
もし相続税申告の期限を過ぎてしまっている場合、できるだけ早く税理士又は税務署に相談し、自主的に申告を行うことが重要です。
早めに対応することで、無申告加算税や延滞税の負担を軽減することが可能です。
期限内に正確な申告を行うことが最も重要ですが、万が一期限を過ぎてしまった場合でも、適切かつ迅速な対応を取ることが求められます。
相続税の申告が必要となるケース
1 相続税と基礎控除額を超える遺産を相続した場合
相続税は、被相続人が亡くなった際に、その財産を相続した相続人が支払う必要のある税金です。
相続税の申告が必要かどうかは、遺産の総額が基礎控除額を超えるかどうかによって決まります。
基礎控除額は以下の式で計算されます:
基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
例えば、法定相続人が3人の場合、基礎控除額は4,800万円(3,000万円 + 600万円 × 3)となります。
遺産総額がこの基礎控除額を超える場合、相続税の申告が必要です。
2 相続税と課税対象となる財産の範囲
相続税の対象となる財産には、被相続人が死亡時に所有していたすべての財産が含まれます。
具体的には以下のような財産があります:
現金、預金
不動産(住宅、土地)
有価証券(株式、投資信託、債券)
その他の財産(自動車、ゴルフ会員権、貴金属、美術品)
生命保険金(一定額を超える部分)
貸付金、未収入金
3 相続税と相続時精算課税制度の適用を受けた場合
相続時精算課税制度を適用した贈与についても、相続税の対象となります。
この制度では、贈与税を納めたとしても、その贈与財産は相続時に合算して相続税を計算することになります。
このため、相続時精算課税制度を適用して贈与を受けた場合、遺産の額にその贈与財産の価値を加算して、基礎控除額を超える場合には、相続税の申告が必要です。
4 相続税と非課税財産の取り扱い
相続税には非課税となる財産も存在します。
代表的な非課税財産には以下のものがあります。
死亡保険金や死亡退職金のうち、「500万円 × 法定相続人の数」までの部分
墓地や墓石、仏壇、仏具
これらの非課税財産は、相続税の計算から除外されますが、死亡保険金や死亡退職金のうち非課税枠を超える部分については課税対象となります。
5 相続税と小規模宅地等の特例の適用
小規模宅地等の特例を適用する場合にも、相続税の申告が必要です。この特例は、一定の条件を満たす宅地について評価額を最大80%減額できる制度です。
たとえば、被相続人が住んでいた自宅の宅地や事業用の宅地が対象となります。
ただし、この特例を受けるためには、申告書に必要な書類を添付して申告する必要があります。
6 相続税の申告期限と手続き
相続税の申告期限は、被相続人が死亡した翌日から10ヶ月以内です。
この期間内に申告書を税務署に提出し、納税を完了する必要があります。
申告書の提出が遅れると、延滞税や無申告加算税が課されることがありますので、ご不安な方は税理士に相談することをおすすめします。
相続税申告の流れ
1 相続税申告で最初に確認すること
まず、相続は被相続人の死亡により開始します。
死亡時点において相続人を確定し、相続手続きが始まります。
相続人を確定するためには、戸籍謄本の収集をする必要があります。
具体的には、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本を取得し、法定相続人を確定します。
次に、相続財産の調査をする必要があります。
まずは、被相続人の所有するすべての財産(不動産、株式、預金、現金、貴金属、生命保険など)をリストアップしましょう。
また、被相続人の負債や葬儀費用も確認し、積極財産から差し引く額を確認します。
なお、相続人は、相続の開始を知った日から3か月以内に相続放棄や限定承認を行うことができます。
2 相続税申告と申告書作成
相続財産がリストアップした次に財産の評価を行う必要があります。
まず、不動産については、路線価や固定資産税評価額を参考に補正等を行い相続税評価額を算出します。
預貯金は、相続開始日時点の残高を確認し、直近の引出額も確認します。
株式については、いくつかの時点における株価を調査し、そのうちの一つを相続税評価として採用します。
すべての財産の評価をして遺産総額の計算した次には、基礎控除額を算出し、課税対象となる遺産の額を確定します。
基礎控除額は、 3000万円 + 600万円 × 法定相続人の数、とい計算式で算出します。
また、相続税申告書を提出する際には、財産の金額がわかる書類も添付することが通常です。
3 相続税の申告・納付
相続税の申告書は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内に管轄税務署に提出する必要があります。
相続税は現金一括で納付することが原則ですが、資金繰り現金資産がない場合には、延納や物納を検討することもあります。
なお、相続税申告の内容に不備がある場合、税務署による税務調査が行われることがあります。
4 相続税と税理士
相続税申告の流れは複雑で、多くの計算が必要なことが多いため、相続税申告を円滑に進めるためには、税理士といった専門家のサポートを受けることが非常に有効です。
特に税金の中でも、相続税の申告は複雑で専門的な知識が必要となるため、税理士に相談することをおすすめします。
相続税を適切に申告しないとどうなるか
1 相続税の申告
相続税については、被相続人の相続開始日の翌日から10か月以内に、遺産についてすべて正確に確認して価格の評価を行った上で、申告書の作成・提出をして、正しい金額で相続税の納税を行う必要があります。
この期限内に適切に申告ができなかった場合には、ペナルティがあり、相続税を適切に申告しないと具体的にどうなるのかについて説明をしていきます。
2 無申告の場合
相続税の申告について、申告期限までに間に合わなければ、期限を過ぎてしまったことに対して、無申告加算税というペナルティが課されます。
期限後に自主的に申告した場合には、本来の納税額の5%を無申告加算税として納税をする必要があります。
なお、申告期限から1か月以内に申告した場合には期限後申告ではありますが、無申告加算税が課されない場合があります。
自主的に申告するのではなく、税務調査によって、相続税の申告義務があるにもかかわらず無申告であることが判明した場合には、本来の納税額の原則15%を無申告加算税として納税する必要があります。
なお、本来の納税額が50万円を超えて300万円以下の部分については20%、300万円を超える部分については30%の無申告加算税が課されます。
また同時に、本来は期限内に納めるべき税金が遅れて納税されることについて、延滞税が課されます。
3 過少申告の場合
相続税の申告を期限内に行った場合でも、適切な申告ではなく、本来納付すべき税額より少なく申告した場合には、過少申告加算税が課される可能性があります。
ただし、税務署から税務調査の通知を受ける前に、自主的に申告を行えば、過少申告加算税は課されません。
税務署から指摘を受け、修正申告を行った場合には、原則として、追加納税額の10%の過少申告加算税が課税されます。
なお、追加納税額が当初申告の納税額、または、50万円のどちらか多い金額を越えている場合には、越えた部分について、15%に相当する金額が過少申告加算税として課されます。
4 相続税を適切に申告するためには税理士へ
上記のように、適切な申告していなければ、追加の納税が発生してしまいます。
また、追加で納税するだけでなく、税務調査が行われることもあるので、相続税の申告についてご不安な方は一度税理士にご相談ください。